期間:2026年6月11日〜6月19日/出典:TechCrunch・Ars Technica・ITmedia AI+・各社公式ブログ(編集部ピック)
ハイライト
米政府が Anthropic の最新モデル Fable 5 と Mythos 5 を安全保障上の懸念で一時停止させて、前週に一般提供されたばかりのモデルが、わずか数日で市場から引っ込められる事態になりました。プロダクト面では、OpenAI が画面操作を録画して AI に作業を覚えさせる新機能 Record & Replay を Codex に追加し、Amazon が自社製AIチップの外販に乗り出して Nvidia に正面から挑む構えを見せています。さらに OpenAI は ChatGPT の健康相談を新モデル GPT-5.5 Instant で強化して無料ユーザーにも開放し、NTT は国産モデル tsuzumi 2 の開発者が AIコーディング急進化の理由を解説と、規制も製品も国産の動きもまとめて動いた一週間だと思います。
主要ニュース
1. 米政府、AnthropicFable 5Mythos 5を一時停止 ― AI開発の政治リスクが表面化
Anthropic が6月10日に提供を始めた最新モデルの Fable 5 と Mythos 5 が、そのわずか数日後の 6月13日以降、米政府の命令で一時停止 に追い込まれました。Amazon の研究者が Fable 5 の ガードレール(安全装置)を突破する方法を見つけた とされていて、安全保障上の懸念がその理由だとされています。前週に Fable 5 を一般提供したばかりだったので、かなりの急展開です。チームみらいの安野貴博党首は6月18日の会見で、牧歌的なAI開発の時代が終わったと述べていて、高性能なAIへのアクセス権が政治のリスクにさらされる時代に入ったと指摘しています。一方で TechCrunch は、停止の措置がかえってブランドへの注目を集めてしまい、利用の数字には目立った影響が出ていないと報じています。
出典:ITmedia AI+ / TechCrunch
2. OpenAI、CodexにRecord & Replay追加 ― 画面操作を録画→AIが作業を代行
OpenAI が、コーディング支援AIの Codex に、画面の操作を録画してそのまま手順を覚えさせる新機能 Record & Replay を追加しました。Mac で Record a skill(スキルの記録)を選んで操作を録画すると、Codex がその一連の手順を学習して、次回から同じ作業を自動で実行できるようになります。例として、YouTube Studio での動画アップロードからタイトル設定までの一連の操作が挙げられています。アップロードするファイルや画面の状況が多少違っていても、Codex が状況に応じて適応 してくれます。当初は macOS ユーザー限定で、提供地域は EEA(欧州経済領域)などが対象だそうです。繰り返しの定型作業を丸ごと自動化する用途を想定しているようで、これは地味にすごいなと思いました。
出典:ITmedia AI+
3. Amazon、自社AIチップを外販へ ― Nvidiaに正面から対抗
Amazon が、これまで AWS の内部で使ってきた自社製AIチップの Trainium を、外部の企業にも販売する可能性を示しました。AWS 幹部の Doron Aronson 氏は、過去には直接のチップ販売を断ってきたけれど、今後は サードパーティにラック単位で販売する可能性はかなりある、と述べています。現行の Trainium も、1年以上先に出る次世代の Trainium4 も、どちらも容量がほぼ瞬時に売り切れるほどの需要だそうです。Andy Jassy CEO は4月の株主書簡で、チップ事業を独立した企業として外販すれば 年間実行レートで約500億ドル規模になる という見通しを示しました。これは Intel の年間売上に匹敵する規模なのですが、Nvidia の年間実行ベースの売上 3,260億ドル と比べると、まだ差は大きいです。AIチップ市場で独走する Nvidia に、正面から挑もうとする動きだなと思います。
出典:TechCrunch
4. ChatGPTの健康相談が強化 ― GPT-5.5 Instantで精度向上、無料ユーザーにも
OpenAI が、ChatGPT の 健康・ウェルネス分野の回答 を大きく強化しました。土台になっているのは新モデルの GPT-5.5 Instant で、無料ユーザーを含む全ユーザー が対象です。緊急の受診が必要な場面の見分けや、足りない情報の聞き返し、不確かな点の説明、専門的な内容のやさしい言い換えなどが改善されました。医師はこれまでに 70万件超 の回答例をレビューしていて、その評価では GPT-5.5 Instant が従来のモデルや、医師が書いた回答を上回る 場面もあったそうです。ライブ環境の監視でも、事実性の誤りを指摘された回答が2カ月で71%減少 しています。ただ、医療行為や受診そのものに取って代わるものではなくて、あくまで一般的な情報提供にとどまります。
出典:OpenAI
5. NTTtsuzumi 2開発者が語る、AIコーディングが5年で急進化したワケ
NTT の国産AIモデル tsuzumi(つづみ)2 の開発者が、AIコーディング(プログラム作成)がこの5年で急速に進化した理由を分析しています。tsuzumi 2 は約3年かけて開発された 日本語特化の大規模言語モデル(LLM) で、コーディングにも対応していて、GPU 1枚でも動く 軽さが特徴です。急進化の鍵になったのは 学習データの拡大と質の向上 で、GitHub 由来の Python コードは 159GB から32.1TB(約200倍) にまで増えたそうです。その結果、コーディング能力の指標である HumanEval の正解率は28.8%から65% へと伸びました。Claude Code のような 専用のAIエージェント が登場したことも、実用水準への到達を後押ししたとされています。国産のモデルがここまで来ているのは、日本の学生としても心強いなと思いました。
出典:ITmedia AI+
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用語ミニ解説
- ガードレール:AIが危険な回答や有害な動作をしないように、あらかじめ組み込まれている安全装置のことです。これを突破されると悪用の恐れが生じます。
- 年間実行レート(ランレート):直近の売上を1年分に換算した見込みの数字です。今の勢いがそのまま続いた場合の年間売上を表します。
- HumanEval:AIのプログラム作成能力を測る代表的なテストです。出された課題を正しく解けたかどうかで正解率を出します。
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